竹熊健太郎×小沢高広トークセッション 「マンガ・ミーツ・デンショ ―電子書籍時代における個人クリエイター活動とは」(2010/9/11)

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概要

竹熊健太郎先生、小沢高広(うめ)先生による電子出版のトークセッションに行ってきました。
当日メモした内容を以下に示します。

マンガ・ミーツ・デンショ 看板

 



詳細



主要トピック

当日のお話から印象深かったものを独断と偏見でピックアップしますと、以下の通りです。




19:00 開始

(セッション開始時、小沢氏の「出版関係者の方は手を上げて」に対し、客席から5名程度の挙手あり。)

竹熊氏 数年前から、Blogで電子出版のことを書いている。
マンガ業界の原稿料について著作を出している(『竹熊漫談 マンガ原稿料はなぜ安いのか?』、イースト・プレス、2004年)。
ライターとしては開店休業状態の頃に、Blogを始めた。
小沢氏のことは前から名前を知ってはいた。
特にKindleでマンガを出すあたりから(小沢氏に)注目していた。

吉田氏 パブーでは現在、約3000作品が公開されている。
Kindleに触発され、Blogの延長として出せるのではないかと思い、バブーを立ち上げた。
パブーはiPadの日本発売(2010年5月頃)を狙ってサイトを立ち上げた。
パブーにおいては、「epub/pdf形式で出せるもの」を電子書籍と定義している。
アクセスはブラウザからが多いと思われる。
算出方式が異なるため、一概には言えないが...

小沢氏 2010年1月に『青空ファインダーロック』をKindleで出版した。
あれから8ヶ月しか経っていないが、(電子書籍を取り巻く状況が)ここまでいくとは思ってもいなかった。


電子マンガの所謂「マルチメディア」化の是非

竹熊氏 知り合いのフリーライターが、アメリカの電子雑誌のデモムービー(下掲)を観て、それを大手の雑誌編集長にメールしたところ、10分後に「是非話を聞きたい」と返信が来たそうだ。

 


小沢氏 プロがマンガでああいうのをやろうとすると、

  • いわゆる「アニメ」になるのか?
  • (キャラクターの)声が入るのか?

という話がついて回るが、自分は、そうはならないと思う。
なぜなら、(リッチコンテンツ化をしてしまうと)マンガの持つ『低コストで作れる』という
メリットが失われてしまう
ためだ。


(注: 『マンガのマルチメディア化』に対する小沢氏の見解については、下記インタビュー記事により詳しく記載されています。)
-----------------------------------
・Kindle初の日本語マンガはいかにして誕生したか――電子書籍出版秘話 (3/3) (ITmedia,2010/3/24)
http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1003/24/news034_3.html
 ※リンク先ページの下から数えて4番目のパラグラフ以降参照
-----------------------------------


Flashアニメの勃興


竹熊氏 2005年頃からFlashアニメが出てきた。
マンガとアニメは、このまま融合していくのかとその時は思った。
ほしのこえ」を観たときに、「手塚の夢が実現した!」と思った。

手塚はもともとアニメをやりたかった。
手塚のアニメ作品には批判も多いのだが、そもそもテレビアニメを始めて、現在のアニメ状況の基礎を作ったのは手塚である。

小沢氏 もし今手塚が存命していたら、きっと電子書籍で何かやってただろう。

 竹熊氏 ナウシカが出たときに、手塚は嫉妬したらしい。
スタッフ全員集めて「あれを観てはいけない。目が腐ります」と教示したエピソードがある。
手塚のアシをやっていた人間に言質を取ったので、確かな情報。

手塚は一人でアニメをやりたかった。
(しかし当時の技術基盤では不可能であったので)漫画でできないかを模索した。
結果、手塚の漫画は「映画的な技法」と評されるようになった。


小沢氏 今(のマンガ家志望者)は必ずしも「アニメやりたい!」が第一ではないように思う。
電子漫画にて、15秒程度のループ動画くらいはやるかもしれないが...


竹熊氏 蛙男氏は、30分アニメを3人で1週間で仕上げている。
この目で作業工程を見た。
やり方(Flashアニメの作り方)が漫画に近い印象を受けた。


小沢氏 ルーツ氏という漫画家がおり、『するめいか』という作品を書いている。
彼は自分でアニメ化をしている。
キャラを2人描いて、背景は実写映像を使用。
ある意味で先端を行っていると思う。

-----------------------------------
cf.
・マイリスト するめいかさん(ニコニコ動画)
http://www.nicovideo.jp/mylist/20312831

・【トレビアン動画】ゆるアニメ『するめいか』の作家ルーツ氏にインタビュー! 「早朝の総武線で......」
http://news.livedoor.com/article/detail/4263206/
-----------------------------------


竹熊氏 今後、アニメまで自身で手がけるマンガ家が出てくるだろうか?

小沢氏 そのあたりが完全に融合するとは思っていない。

竹熊氏 その辺は立場の違いもあって、意見が分かれるところだろう。


「電子版に売れて貰っちゃ困る」

竹熊氏 出版の現場にいる編集者達は、(電子書籍を)怖がっているように見える。

小学館が『うる星やつら』のiPhone版を出したが、価格が450円。
紙より高い。
(消費者に)受ける訳がない。
なんで紙より高いのか、編集者に訊いたら
「電子版に売れてもらっちゃ困る」と言っていた。

-----------------------------------
cf.
・少年サンデー コミックス
http://websunday.net/iPhone/
(注:アプリのバージョンアップに伴い、「少年サンデー for iPhone」から「少年サンデー コミックス」に名称変更されている。)
-----------------------------------

竹熊氏 大手出版社の取り組みは間違っている。
今まで紙でやってきているのだから、気持ちも分かるが...
ネットからダウンロードするものに対して、そんなにお金を払いたくない、という心情もあることはある。

小沢氏 自分は結構ネットから落とすものにお金を払っている。
iPhoneのアプリ代で月6000円くらい。
Appleが成功したのは、DRM競争に参加せず、ユーザーがお金払って手っ取り早く利用できる環境を
提示したことにあるのではないだろうか。

竹熊氏 (ダウンロード販売のビジネスモデルでは)大手出版社は、その規模を維持できないだろう。
小沢氏 大手出版社の給料は凄く高いと聞くが。
竹熊氏 30歳で1000万くらい。
小沢氏 マンガ家で30歳で1000万といったら、相当な売れっ子にあたる。


竹熊氏 Amazonは作家と直でやろうとしている。
印税70%という数字が提示されている。
有名作家が日本の大手出版社から自作を電子書籍で出して、揉めたらしい。
印税が10%くらいだったとか。
電子なら、せめて30%は出さないと...


『東京トイボックス』の電子化計画


小沢氏 パブーで『東京トイボックス』を電書として売る計画がある。
これはDRM無しのPDFで売る。
売り上げの按分比率についても自分(小沢氏)から提案し、幻冬舎コミックスに了承して貰った。
納得のいく配分であったと思う。

(注:パブーでは、有料書籍の売り上げの30%が販売手数料として差し引かれます。
 ここで小沢氏が言及しているのは、残り70%の配分についてのお話です)
----------------------------------------------------------------------
cf.
・よくある質問(パブー)
http://p.booklog.jp/about/faq
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(注:2010/9/16、パブーに電子書籍『東京トイボックス 1巻』が登録されました)
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cf.
・『東京トイボックス 1巻』(パブー)
http://p.booklog.jp/book/9399
・『東京トイボックス 2巻』(パブー)
http://p.booklog.jp/book/10482
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『少人数』という電子書籍のメリット


小沢氏 この件(トイボ電子化)については、自分(小沢氏)の方からパブー、幻冬舎に対してアクションを起こした。
作者・編集者(出版社)・販売者(パブー)の3者で揃って話をすることができた。
紙の本の場合、全ての工程に関わる人が一同に会することはまずない。
電子書籍なら、全ての関係者が集まって打ち合わせることが可能であった。
この軽さが電子書籍のメリット
と言えるのではないか。

竹熊氏 電子書籍だと、凄く少ない人数で出版ができてしまう。

小沢氏 (電子書籍が普及すると)現在の出版社という会社形態が維持されるのか?という疑問が出てくる。
(絵がうまい人、プロデュース能力のある人、などの)個々人のスキルを活かして、
アイデア出し合って電子書籍で出す、という形になっていき、
小さいものが一杯出てくるようになる
のではないだろうか?


コミュニティの持つ「ハブ機能」


竹熊氏 Blogで『「町のパン屋さん」のような出版社』というエントリを書いたところ、これが一番反響が大きかった。
あの記事を書いた後、地方の出版社の社長から連絡が来た。
その方はフライフィッシングの本を専門的に出す出版社を経営しており、社長夫婦と子供の3人でやっている。
フライの本を作り、全国の釣具屋に置かせて貰っているそうだ。
80年代に書いたフライ入門書がそこの売れ筋商品で、いまだに売れている。
全国のフライフィッシャー人口がどれほどいるかは知らないが、
コアな人はまず最初にその入門書を買っていると思われる。
その社長曰く、『うちはその本で保っている』とか。


小沢氏 それは、対象が「釣り」という一定人口のいる分野であるのがポイントであるように思う。
釣具屋さんがハブとして機能している。
電書フリマで知り合った中に、インコマニアの方がいた。
ネットで他のインコ好きと繋がりを持つようになり、インコの本を出すべく動いている。
電子書籍部界隈では「インコ編集長」と呼ばれてたりする。
これを例に取ると、インコ好きのコミュニティがハブとして機能している。

竹熊氏 それは、いい話だなあ(しみじみと)。

---------------------------------------
cf.
・インコ編集長(タカギ タイキチロウ氏)
http://twitter.com/taikichiro
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「大ヒット狙い」から「気軽に出版」スタンスへ


竹熊氏 マスなところを相手にするのではなく、特定の趣味に特化したものを出すような形態が増えていくのではないだろうか。
5000人とか、1万人くらいの趣味人口のジャンルで。

小沢氏 大もうけを狙うのではなく、「気軽に出していく」スタンスに移っていくのではないか。


竹熊氏 出版社はこれから大変だが、我々はもとからフリーなので、これはこれでいいかと思う。
元々(立場的に)恵まれていなかったし。(会場内笑い)

小沢氏 『サルまん』では随分儲かったのでは?

竹熊氏 確かに、『サルまん』出してた時は年収が3倍になった。
しかしそれはあくまで一過性のものであって、長くは続かないものである。

竹熊氏 以前、『こち亀』の秋本治先生に挨拶をした際に、氏から
『(サルまんを)読んでました。あれは何年続きましたか?』
と問われた。
『正味2年、足かけ3年』を返答したところ、
『よく、続きましたねぇ~』
と感嘆された。
秋本治をして『よく続いたね』と言わしめたのは、漫画界でも自分と相原コージくらいではないか。

小沢氏 『こち亀』こそ、電子化してほしい。


マンガの長期連載化と新古書店

竹熊氏 自分が高校生の頃は、長期連載なんて無かった。
20巻以上続いているマンガはまれで、『サイクル野郎』(少年キング)は例外的に長かった。
先日、eBookJapanで『サイクル野郎』を全巻買いした方がいた。
彼は長年のファンだが、「単行本の巻数が多かったので、電子書籍になって、初めて手元に全部そろった」と言っていた。
これなどは電子書籍だからこそ可能であったと言えるだろう。

-----------------------------------
cf.
eBookJapanの「サイクル野郎」販売ページ。
 1巻あたり315円、全37巻。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/title/5042.html
-----------------------------------

竹熊氏 80年代からマンガ産業が産業として完成した。
長期連載の始まりである。
自分は「長期連載化はまずいのではないか?」と出版社の人間に言ったことがある。
終わらせどころを失ってしまう点を懸念していた。

出版社は長期連載で自らの首を絞めたのだと思う。
マンガ喫茶や、BOOKOFFなどの新古書店に対して、かつて出版社が大々的に反対運動を起こしたことがあったが、ああいう産業が勃興した原因を作ったのは誰なのか。
元をたどれば長期連載のせいだろ!と言いたい。
膨大な巻数を誰が買うというのか。

小沢氏 買い控えの理由としては、

  • お金
  • 場所

が挙げられるが、少なくとも電子書籍で場所の問題はクリアできる。


雑誌、冬の時代へ


竹熊氏 これからの時代、雑誌は厳しい。
基本的に無くなる。

だがオッサン向けはしぶとく残るのでは?
ゴラクとか、サンデーとかは最後まで残るような...
あとジャンプも無くならないだろう。
一つの文化が完全に消滅することは無いだろう。
能とか歌舞伎が今でも残っているように。


雑誌の代替機能としてのインターネット


小沢氏 自分がデビューした頃は、(同じ雑誌に連載している)大作家に食わせて貰っていたように思う。
(マンガ雑誌が無くなると、)新人がお金を貰って上手くなっていく場が無くなってしまうのではないか?

竹熊氏 雑誌の機能として、『新人の発掘と育成』がある。
新人が育ってから(利益を)回収する。


小沢氏 自分は今デビュー9年目だが、(新人の頃は)まだ雑誌側にも金があったと思う。
ちばてつや賞を獲って、次の打ち合わせで連載が決定した。


竹熊氏 当時の雑誌は『面白ければ載っける』というスタンスであった。
今は厳しい。


小沢氏 今だと、(新人のフィールドは)pixivになるだろうか。

竹熊氏 pixivのランキングで1位を取ると、仕事のオファーが来るようになる。
ラノベの挿絵の依頼などが来るそうだ。

多摩美の生徒400人に漫画を描かせると、2~3人は「これは!」という人材が見つかる。
そういう子達を集めて『マヴォ』を出した。
油画専攻の学生に、上手い子がいた。
僕の講義では学生に最後にマンガを描かせるのだが、彼女は作品とは別に、自分の過去作品を取りまとめたポートフォリオを持参してきた。
訊けば高校時代からpixivで描いていたとのこと。
『マヴォ』で描かないかと持ちかけたら、既に別の出版社からオファーが来ていた。

生徒から「どこの出版社に持ち込めば良いか?」と相談を受けることがあるが、
「ネットで発表しろ。本当に上手ければ仕事が来る。」と答えている。

【昔】
漫画賞が新人発掘の場。
新人の方からやってくる。

【今】
ネットで描いている新人に出版社の方からアプローチする。

小沢氏 昔は作家の雑誌に対する帰属意識が高かった。
それに比べると、pixivあがりの方々は発想がフリーランスのものに近い。


竹熊氏 新人が雑誌へ持ち込んだ後、生殺与奪は出版社の側に委ねられた。
pixivはその逆の構図になっている。
作家が自分のサイトにネームをUpして、オファーを待つというスタイルが出てくるのでは?

小沢氏 それは今自分がやろうとしている。
Upする場としてはパブーを考えている。


竹熊氏 マンガの世界には、「漫壇」といったものが無い。
芥川賞は年功序列の世界。
大江健三郎は石原慎太郎に頭が上がらない。

手塚は権威的ではなかった。
政治的に新人を潰すようなことはしなかった。
嫉妬はするが、作品で勝負、の人だった。

 


「エージェント業」成立の可能性

吉田氏 現在、パブーでの漫画の比率は2割程度。
当初、プロが作品をUpしてくることは想定していなかった。
pixivのイメージでいた。

竹熊氏 パブーから商業デビューというのも今後は出てくるだろう。

小沢氏 フリーの編集者と組んで出すような時代になる。

竹熊氏 エージェント業が成立してくるのではないか。
日本の漫画界には組合が無い。
歴史的には、組合潰しの話なども...
アメリカではユニオンとエージェントが並立し、バランスを取っている。
日本もそうなるのではないか。

小沢氏 (日本では)エージェントの有り難みが理解されていない。


「会社員」としての編集者


竹熊氏 編集者はエージェントに近い。
作家は社員ではない。
複数連載を持つと、(一作家に対して)エージェントが複数、という構図になり不自由。
エージェントは新人にこそ必要。ビジネスのプロとして。

小沢氏 すごく合う編集さんがいても、「雑誌と合わない」ために悔しい思いをすることがある。
「作品は良いんだけど、うちの雑誌では載せられないです」と言われる。

編集者の人事異動の問題もある。
今の自分の担当編集は5人目。


竹熊氏 雷句誠氏は担当編集が5年で7人替わった。
彼のブログや上申書を呼んだが、初代の担当との仲は最後まで良好だった印象がある。
しかし編集者がサラリーマンである以上、異動があることは当事者にはどうすることもできない。


「作家タイプ」の編集者とは

フリーの編集者が増えて、エージェント化していくのでは。
例としては、『のだめカンタービレ』の担当編集である三河かおり氏が挙げられる。
氏は最初からフリーであり、ずっと担当することができた。
また、浦沢直樹氏を担当した長崎尚志氏の例もある。
人事異動で別の編集部に移っても浦沢氏の入稿まで面倒を見ていた。
これはかなり例外的ではあるが...
長崎氏などは、『作家タイプの編集者』の一例ではないだろうか。

小沢氏 作家は100%作家ではないし、編集者も100%編集者ではない。
ボーダーな人もいる。

自分の『大東京トイボックス』に対する関わり方を漫画業界外の人に話すと、不思議がられることもある。

竹熊氏 作家と編集者がこれほど密接なのは、(漫画の)他には無いのではないか。
70年代を例に取ると、
新人の合い鍵を持っていて、夜中2時に勝手に部屋に入って冷蔵庫の在庫状況をチェックし、不足分を補充していく編集者などもいた。
当時の新人作家は年齢的に若い人が多かったため、編集者が生活面でサポートしていたという背景もある。


ネット志向の新人と、編集者の需要形成


小沢氏 今後、年齢が高い人のデビューが増えないものだろうか。

竹熊氏 ネットで発表する形態だと、とにかく作品で勝負!ということになる。
マヴォの表紙を描いている方はアラフォーである。
元々はOLで、30歳を越えてから漫画、Flashアニメをやり始めた。

小沢氏 ネットで発表すると、(年齢などの)余計な要素が減る。
竹熊氏 埋もれてしまう恐れも出てくる。
そこで「注目を集めなければ!」という動機が作家に生まれる。
そのニーズに応えるのが編集者ではなかろうか。
編集者は、客観的な視点として必要。
描かれたものを「商品」にするためには、この「客観性」が必要。

小沢氏 良い編集者さんがいて、その人の最小限の指摘で最高に作品が良くなる時がある。

竹熊氏 編集者もフリーになって、作家と同じく競争原理にさらされるようになる。
ダメ編集はクビ、という時代。
出版社を代表するものではなく、直接契約の弁護士のようなイメージになる。


マンガ・ユニット「うめ」について

小沢氏 自分はいわゆる「原作者」ではない。
プロットとネタ出しは(妹尾氏と)2人で行っている。
また、作品の最終チェックまで自分で行っている。


竹熊氏 作品は作家と編集者の2者で作られていくため、「原作者」は作品に口をだせない。
これが嫌で自分は「原作者」を辞めてしまった。

『サルまん』には一応作家として関わっていた。
打ち合わせを相原君と2人で行い、これが実質の「原作」となった。
打ち合わせでは自分が一晩語り、これを相原君がネームの形にまとめ、蘊蓄部分は自分が担当した。
この作り方が成立したのは、自分と相原君の人間関係が下地としてあったから。

『サルまん』は相原君との共同制作だが、あれが終わってからは、自分のマンガとの関わりは「マンガ監督」をやりたかった、ということだ。
アニメ制作のイメージに近いのだが、90年代までは原作者のこういう希望がかなえられることは滅多になかった。
『サルまん』第2弾では、電子化をやりたかった。
アニメなどのメディアミックスを展開してみたかった。
やってみて、でも売れない・・・みたいなものを。
ハルヒの出来損ないみたいなものを作って、声優募集して「教頭先生おやめになって」とか言わせたり。


小沢氏 自分は共同制作で漫画を作っているが、当初はやり方を模索している状態にあった。
『大東京トイボックス』でゲーム業界を扱うことにより、「分業」を学んだ。

竹熊氏 トイボは具体的な作品づくり編に入ってから、俄然面白くなった。
最初は「魂は合ってる」とか精神論的なもので、それはそれで良かったが。


ジョブズとウォズニアックの物語、AppleにRejectさる


小沢氏 iPhoneで読める漫画として、ジョブズとウォズニアックの物語を描いた。
ジョブズがIntel社に行って「このヒッピーくずれがっ!」とか言われるような作品を。
英訳して審査に出したら、Rejectされてしまった。
更にAppleから「電話よこせ」との連絡が来て、開発担当が折り返しTelしたところ、
「これはAppleのリアルストーリーなので、許可できない」
と言われた。
この作品はいずれどこかで出したい。


パブーのパクリ対策

吉田氏 規約上は、

  • 他者の著作権を侵害してはならない
  • 二次創作はNG

としている。
今後、(二次創作について)コンセンサスがとれればOKにしていきたい。
Upされた作品の事後チェックを実施しており、PDFファイルもアップロードできないように制限している。
これは「自炊」したデータをそのまま挙げられることを防ぐための措置。

(注:「自炊」とは、市販の紙の本を裁断してドキュメントスキャナーで取り込み、自分で電子化することを指す隠語です。)


絵が描けない人でもプロレベルの作品を出せちゃうツール

竹熊氏 今後、連載漫画はアメコミ(分業)形式にすべき。

小沢氏 それだとコストが増大するのではないか?

竹熊氏 漫画作成を支援するソフトを出す動きがある。
これは「絵が描けない人でもプロレベルの作品を出せる」という代物だ。
10月には正式発表が出ると思う。

小沢氏 そのソフト、やばくないですか?
やだなー(笑顔で)。

竹熊氏 詳しい内容はいえないが、3D機能を駆使して、キャラも背景もすべて一人で描けるというもの。
ソフトからネットへのUploadも対応。
「同人誌が誰でも作れる」ようなものを目指す。
コミケでブレイクするのではないかと睨んでいる。
また、

  • プロがネームを切る時に
  • ラノベ作家が自作の挿絵に

といった用途も考えられる。
(データが使い回せるので)『めぞん一刻』のような連載作品で威力を発揮する。


(注:2010/10/4、ここで竹熊氏が言及していたソフト『コミPo!』が正式に公開されました。)
----------------------------------------------------------------------
cf.
・コミPo! 公式サイト(株式会社ウェブテクノロジ・コム)
http://comipo.jp
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小沢氏 トイボも背景をデータで持っている。
コミスタを導入したら、アシが2人減ったという話も聞く。
マンパワーは減っていく傾向にある。
パブーで「複数人でアカウントを共用」する機能をつけてほしい。
作家・編集者による修正作業が楽になる。

吉田氏 現在、開発を行っている。

竹熊氏 サーバー屋がメディアの中心になってくるのではないか。
(サーバー屋が)流通、出版を兼ねるような形に。

ただし、

  • メディア作りの専門家
  • 客観的アドバイス

のために、編集者も必要。
編集者抜きで漫画を描くというのは、弁護士抜きで裁判をやるようなものだ。


「編集者の仕事」は説明しづらい

竹熊氏 編集者の仕事が分かっていない学生が多いと感じている。
『バクマン』のおかげで、漫画プロダクションのAO入試への申し込みが倍に増えた。

小沢氏 『編集王』の時にやってくれれば...!

竹熊氏 編集者の仕事というのは、説明しづらい。
例えば映画監督の仕事を説明すると「作品は監督のもの」であり、監督はスタッフの仕事に「ダメ出し」をする権利を持っている。
『ダメ出し』は監督の最大の権利だと、庵野秀明が言っていた。
YesかNoの判断ができるのが映画監督である。
Allオッケーの監督もいることはいるが・・・

監督の仕事に対して意見をするのがプロデューサーで、マンガ編集者は、プロデューサーの立場からYes/Noの判断をする。
ただ、様々な力学が働いており、この辺説明はしづらい。

小沢氏 『大東京トイボックス』では、最終的な判断は自分が行っている。
竹熊氏 それは映画監督的な関わり方と言えるのではないだろうか。

小沢氏 『東京トイボックス』では、最初に6ページの企画書を持ち込んだ。
竹熊氏 そういうことをできるところが、電書作りに(資質的に)向いていたのでは?


竹熊氏 プロダクション制の導入については、さいとう・たかを氏が早かった。
さいとう氏が驚いたという、以下のエピソードがある。
氏が貸本時代の仲間達に声がけして本を出そうとしたところ、誰も乗ってこない。
みんな自分が天才だと確信していた。
そんな馬鹿なことは無い。
全員が手塚なわけないだろう。とさいとう氏は憤ったとのことだ。


小沢氏 自分はかつて、妹尾氏に対して
「賞は獲れるが、連載にはこぎつけないだろう。
 ピンでやっていくことはあきらめなさい。」
と言ったことがある。
世に出すためには共同でやっていくのがベストであると考え、
ユニット「うめ」を作ったという経緯がある。


竹熊氏 「才能はあるけど、プロにはなれない」学生というのがいる。
教え子に凄く上手い子がいた。
80p程度の作品を描かせようと思い、とりあえず第一話(24p)をお願いしたが、いつまで待ってもペン入れが始まらない。
何故かと問うと「最後の最後まで話(ネーム)が決まっていないと描けない!」と泣き出す。
裏でBL本は出していたが・・・


竹熊氏 大学側が出版社的なことをし始めた理由としては、

  • 新人を育てる力(金)が、出版社側に無くなってきている。
  • 大学の少子化対策

が挙げられる。
京都精華大がマンガ学科を創設した当初は、応募が10倍になった。
以後、他大学も精華大のマネをし始めた。

竹熊氏 「商品としてのマンガ」について考えると、大学はメディアを持っていないので弱い。
小沢氏 いっそ、生徒同士で担当編集/作家として組んでやらせてみたらどうか?
竹熊氏 三河氏のゼミでやろうとしている。そこは卒業生も入れるゼミがある。

 


日本でもマンガ作りの「アメコミ化」を

竹熊氏 日本の週刊マンガ連載は非人道的である。
人間がやってはいけないレベルの仕事であり、どうかしている。
週刊でやるなら、さいとうプロのようにアメコミ形式で取り組まないといけない。

アメコミでは作品の権利を会社が持っている。
会社が作家を雇い、チームを編成して描かせている
この方式により、例えば『スーパーマン』シリーズなどは1930年代から脈々と描かれ続けている。


小沢氏 アメコミのような(組織化された)やり方の対極がpixivなのでは。


1000万で新人に週刊連載を

竹熊氏 一つ提案したいのは、
プロデューサーが最初に1000万程度の資金を集めて、それを原稿料やアシスタント料にあてて新人に1年間週刊連載をさせてみる
というのはどうだろうか。
中堅どころだったら1500万くらいで。
1000万集めて、映画会社主導でプロダクション方式でマンガを描いていく。
当たれば利益は出資者に還元する。

そもそも日本の漫画界は契約がちゃんとしていない。

小沢氏 自分の場合は、本が出た後に契約した。

竹熊氏 このルーズさには良い/悪いの両面があるが、
(契約周りは)ビジネス的にしっかりしていく必要がある。
その背景として、作家のリスクがめちゃくちゃ高い点が挙げられる。

小沢氏 連載中に「あと3週で終わらせて下さい」と言われたことがある。

竹熊氏 作家と同じく、編集者も人気競争にさらされる時代になる。
ヒットしなければクビ!という。

 『よつばと!』は作家と編集者が組んで(プロダクション方式で)やっている。
長崎氏と伊藤潤二氏が組んで、外務省のラスプーチン(佐藤優氏)をテーマに作品(『憂国のラスプーチン』)を描いたが、そのクレジットには

『プロデュース:長崎尚志』

と記されていた。

=================================================================

ここでお店側より時間切れ間近のアナウンス。「21時で〆て」とのお達し。(20:55)


質疑

Q1.
電子書籍のマンガを海外に売り込みたい。
どうやれば海外で売れるだろうか?

A1.
竹熊氏 『マヴォ』も海外で売ろうと考えている。
小沢氏 ネット課金の部分がもっと楽になれば...
竹熊氏 携帯マンガは決済が楽。
小沢氏 まずコンテンツが面白いという前提があった上で、あとは翻訳のプロを抱えればいいのでは?


Q2.
『若者奴隷時代』という作品を描いている。
ネットでも話題になり、TVにも出た。
しかし、(紙の本の)販売がうまくいかない。
Amazonでも良いタイミングのところで「品切れ」になってしまった。
今後電子書籍を売るとして、リアル社会で宣伝をやっていくためには、どうしたらいいのだろうか?

A2.
竹熊氏 著者自身がサイトを立ち上げて宣伝する。

Q2質問者 それはやっている。URLをメールして宣伝もしている。

竹熊氏 やっぱりサイトでの宣伝が効果大と考えている。
『サルまん』をBlogで宣伝したら、Amazonアフィリエイトだけで2000冊いった。
その頃脳梗塞で入院中であったが、Amazonからミネラルウォータの差し入れが病院に届いた。
Amazonから小学館に対して「第2刷はないのか?」と打診が来た。

 

Q2質問者 ネットではほうぼう手を尽くしてやっている。
ただリアル書店での売り込みがどうしてもうまくいかない。


小沢氏 自分は『大東京トイボックス』の新刊発売日に、アポ無しで各書店を廻り、

  • Twitterで実況
  • 辻サイン

などを敢行した。
それらが売り上げに直結したかは判らない。
だが話題にはなったし、楽しく宣伝することができた。


Q2質問者 例えば1000円の本を1万部刷ると仮定する。
この場合印税は100万円。
これは新人には辛い(ペイしない)。
そこで電子書籍でフォローしたいところだが...

小沢氏 1万部は現状無理だろう。
マーケットがもっと成熟してこないと。

竹熊氏 海外版を作るという手もある。
作家一人が食えるぐらいにはなるのではないだろうか。

小沢氏 
いずれにしても、ここ1~2年では無理な話。
あと5年ぐらい後なら、あるいは。

竹熊氏 例を挙げると、韓国人のマンガ家の方が...

ここでお店側より「本当にこれ以上は(時間的に)無理です」との声がかかり、
21:09 セッション終了。

 


以上

 


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このブログ記事について

このページは、九龍堂が2010年9月12日 21:23に書いたブログ記事です。

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